東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18
西ノ宮叶星を見送り会議室を出た氷室仁の前に、どこからともなく彼の秘書が現れた。

「お疲れさまでした専務。如何でしたか?」

秘書は興味深げに上司を見つめた。

通常このような面接は、担当者が執り行う。
専務取締役である彼がわざわざ顔を出すからにはそれなりの理由があるわけで、今回面接を受けた女性は"普通じゃない"ということになる。

その理由を、秘書は知らない。

資料を秘書に渡しながら、唇の端でニヤリと仁は笑う。

「いい人材だと思うよ。予定通り、『兎う堂』で、あとは頼む。ただし三か月だ。次を紹介するとしても間は三か月取ってほしいそうだ」

「わかりました」

「無理には働かせるなよ。逃げられは困る」

「はい」

エレベーターに乗り、二人きりになると仁が言った。

「なぁ、ある日、五億の金を手に入れたとしたら、お前ならどうする?」

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