東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18
何度かけ直しても野呂は電話に出ることはなかった。

それから叶星は必死で走り回り、前職の伝手を頼ってなんとか代替えの場所を確保した。

結局野呂から返事があったのは、連絡も全てが終わり、叶星が会社を出てからだった。
全て解決したという報告を読んで、ようやく返事をする気になったのだろう。
『助かったよぉ、ありがとう叶星ちゃーん』
そして、投げキッスのスタンプ。

その間抜けな書き込みを見て、野呂は逃げたのだと、叶星は気づいた。
わかっていて、彼は今日有給休暇を取ったのだろう。

『兎う堂』の広報に配属され、野呂の下で仕事をするようになってかれこれ半月あまり。最初から彼の力量に疑問を抱いていた。その疑問が、今回のことで確信に変わったわけだ。

恐ろしいことに野呂は責任を放り投げたのである。
逃げて、一体どうするつもりだったのだろう?



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