東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

そして――。
叶星が奔走した日から三日後。

何ごともなかったかのように、撮影は無事終了した。

叶星が騒ぎ立てずに粛々と事を治めたこともあるだろう。野呂は課長や部長にも上手く誤魔化したらしい。

思わずため息と共に、叶星は「呆れた」と呟いた。

もしこの先もここで働きたいという気持ちがあるなら、うやむやにさせず課長に相談するなどの対応をしたと思う。

でも今の叶星にはそんな前向きな気持ちはおろか、ここ『兎う堂』への執着など微塵もない。
むしろ『こんな会社、契約更新は絶対にしない。三か月で辞める』という強い気持ちがあるだけだ。

――まったく。

でも。ここで働く皆さんはそれでいいの? ここ、一流企業でしょ?
副社長、あなたね、人のことバカにしてないで、会社のことちゃんと見ているんですか?
< 98 / 394 >

この作品をシェア

pagetop