東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18
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その後も野呂の細々とした尻拭いを続けながら、叶星の五月は過ぎ去った。
残すところあとひと月。
「叶星ちゃん、これ。ほとんど作っておいたから、あとお願い」
能天気な野呂の声にムッとして顔をあげると、部屋に入ってくる東堂副社長の姿が見えた。
広報課のあるフロアに彼が現れるのは珍しい。
うっかり視線が噛みあってしまいますます苛立ちが募り、心の中とはいえ罵り方も激しくなった。
このクズ社員をなんとかしなさいよ、クズ御曹司。
心の中でそう吐き捨てると、その不満が伝わったのか、東堂副社長は目を細めて叶星を見下ろしながら近づいてくる。
「おつかれ」
――おっと、危ない。触らぬ鬼に祟りなし。
おとなしく愛想笑いを浮かべ「おつかれさまです」と答えてからデスクに向き直った。
どうしてこの人は、顔を合わせる度にいちいち声を掛けてくるのだろう?
ほんとうに面倒くさい。