保野田、意味わかんない
わたしたちは、関わりのないクラスメイト。だけど。
『──おれ、笠原さんのことがすきなんだけど』
少し不服そうに、すき単体では伝えなかった保野田の、あのときの顔を思い出す。
保野田は、1週間前、わたしに告白をした。
だから。思い出してしまうから。長居は、いやだったのに。
どうして保野田が?だってわたしたち、関わりのないクラスメイトだったじゃん。
そう思った。彼は、返事をせずに口をぱくぱくとさせるわたしに向けて放つ。何度も、何度も、息を吸いながら。
『誰もいない教室で、笠原さんは叫ぶ。笑う。おれ美術部なんだけど、疲れたなって校舎歩いてたら、ひとりで変なことしてるヤツいてさ。そっから、気になるの。普段猫かぶってきゃいきゃい笑ってるうるさいヤツが、本性表わしたわって。それでさ、ほんと、納得いかないけど、たったそれだけですきになったみたいで』
たしかにわたしは、放課後の誰もいない教室で、スマホをいじりながら叫んだり笑ったりしていた。面白い漫画や動画を見て、ストレスを吐き出して。
だけどそれを見られているとは。それをすかれるとは。
思わないじゃんか。