保野田、意味わかんない
「あ、足乾いた。取ってくる」
冷蔵庫様にお辞儀をして。
彼の前まで、再び戻る。
「じゃ、帰るね」
「っ、名前、呼んでくれる?」
「……」
わたしは少し考えてから、
「やだよ」
と笑った。
彼はショックそうにくちびるを動かす。尖らすとも、噛むとも、なんだか違った。
わたしは追い打ちをかける。
「今日は苗字呼び卒業式だから。今日までね」
ザバァ!
彼が立ち上がる。
「えっ、え、まじ?」
「まじまじ」
可愛げのないわたしだけれど、いいんじゃないだろうか、この関係。
「え、え?どういうこと、おれ、海愛……さん、の彼氏?」
「ん?」
聞き返すと、彼はたじろいでから。
「海愛の彼氏になっても、いいですか」
呼び捨て、申請が始められた。
「いいですよ」
可愛げのないわたしだけれど、完璧じゃないか、この関係。