溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
「りーこ、・・・李子!ただいま!」
大輝の声が聞こえ閉じていた瞼を持ち上げた。
あれ?私眠ってた?『おかえり』そう答えながら時計を見ると六時二十四分。
うそ!一時間も寝てたわ!
「お風呂も入れとこうと思ったのに寝ちゃった。」
起き上がった私の横に座り『シャワーでいいよ。』と優しいキスを落とす大輝。
はあ、なんか幸せな空間だな。
「じゃあご飯の仕上げしちゃうからシャワー行ってきて。お腹空いたでしょ?」
テーブルにつきご飯を食べていたら大輝が『本当に引っ越そうかな』と言い出した。
広瀬さんと私の目が合ったことが気になるらしい。
「李子も一瞬見ただけなのに覚えてたって事は向こうも覚えてる可能性が高いと思う。李子もうちに来る度、警戒しないといけないの疲れるでしょ?実際、今日は疲れて寝てたし。いつも玄関まで迎えに来てくれるのに出て来ないし、家の中は静かだし、俺がどれだけドキッとしたか分かる?」
確かに今日は何だか気疲れした。
毎回あんな風に警戒して遠回りしないといけないとか嫌だ。
うーんと考え込んでると
「まあ直ぐには引っ越しも出来ないし、それにいい機会だから一緒に住まない?」
と提案された。
「でも、私が家を出るとお母さん一人になっちゃうし。」
「うん、だから考えといて。俺も今仕事忙しいから二カ月は引っ越しするのもムリそうだし。」
同棲してもいい?なんて親に簡単に言えない。
奈津に相談したら『いいじゃない!お母さんも彼氏いるんでしょ?李子がいない方が一緒にいる時間増えていいって言うかもよ?』なんて簡単に言ってくれるんだから。
そんな感じで答えが出せず一人モヤモヤしている時に待ちに待った≪内定≫が出た。
職場は家から一時間ちょっとかかる都内にある小さな出版社。
雑誌と言ってもタウン誌のようなものを中心に出している。
社長の他には社員十一名、パートさん四名しかいない小さな会社。
大企業でもない、そこが私の第一希望だった。
【内定!第一希望に受かったよ!】
ってメッセージを送ったら直ぐに【じゃあお祝いしないとな!】って返事が返ってきた。
母にも内定のメッセージを送ると夕方驚く内容の返事が返ってきた。
【おめでとう!お祝いしましょ。大輝君も呼んでお母さんと内藤さんの四人で。今週の土曜日に予約入れるから大輝君に予定聞いておいてね。】
なんで?お母さんと大輝と三人ならわかる。
もしくはお母さんと内藤さんとの三人か。
どうして四人?
なぜ母の中でその四人での祝いになったのか理解できないが、とりあえず大輝に予定を聞かないと。
【あのね、お母さんが大輝も一緒に内定のお祝いしないかって言ってるの。土曜日なんだけど仕事とか用事ない?】
メッセージを送って直ぐに大輝から電話がかかってきた。
「李子?俺は土曜日大丈夫だけど、いいのか?お邪魔して。」
「うん。あのね、来るの大輝だけじゃないの。」
「他に誰が来るの?奈津ちゃん?」
「違う。それがね、お母さんが今お付き合いしてる内藤さんって人も一緒に四人でお祝いしようって言われた。」
「お母さんの恋人?それこそ俺が行っていいの?」
「だってお母さんから四人でお祝いしましょ。大輝君に予定聞いておいてってメッセージが来たんだもん。だからいいと思う。」
「分かった。時間と場所が決まったらまた連絡して。あっ、李子、おめでとう。良かったな。」
「ありがと。また連絡するね。」