183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
(なんだ、この感覚。前にもどこかで、誰かのうなじを綺麗だと思った気がする……)

気になって記憶を探るも、思い出せない。

記憶力には自信があるのに、呼び起せないということは、かなり古い出来事なのかもしれない。

頭の中の引き出しをあちこち開けている柊哉に、真衣が後ろを向いたままで言う。

「明日はケーキとオードブルを作るけど、今日はあれこれ用意しないよ。夕食は肉じゃがと常備菜ね」

「肉じゃがは嬉しい」

「じゃあ先に帰るね。残りの仕事、頑張って」

真衣はそれだけ言うと、足早にエレベーターホールへ向かい、その後ろ姿が見えなくなった。

柊哉は反対側の、副社長室へと歩き出す。

夕食が好物だと聞いて、早く仕事を終わらせて帰りたいという気持ちが強まった。

不思議な既視感について、これ以上考えている暇はなさそうだ。



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