183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
(最近は家事を任せるのが当たり前になってしまっていたな。真衣に甘えているのか、俺は。これじゃ駄目だろ。せめて、ごみ出しくらいやらないと)

玄関に置かれていたごみ袋を見てそう思った柊哉は、通勤鞄を置いて、ごみ袋を持った。

ごみの集積場所は、マンションの敷地内にある金属メッシュの頑丈な箱だ。

カラスに荒らされる心配はなく、一見清潔そうだが、多くの人が触れるものなので、できればごみ出しをした後に手を洗いたい。

そういう理由で、そのまま駅に向かわず戻ってこようと、玄関の上がり口に鞄を置いたのだ。

そこに真衣が、シャワー後の濡れた髪を拭きながら現れた。

『行ってらっしゃい。ん? ごみ、私が出すから置いといて。急いでるんでしょ』

『電車を一本遅らせる』

『いいって言ってるのに』

そう言った真衣は、柊哉の手から強引にごみ袋を奪った。

シッシと追い払うような仕草までして可愛げがないが、そういう彼女の態度にはもう慣れている。

結果として助けられてもいるので、柊哉は怒らずにお礼を言った。

『お言葉に甘えさせてもらうか。悪いな。いつもありがとう』

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