壊れる世界と不死身の子
第5話〝行方〟

部屋を出る。
そういえば、魔界なんて来たことないから、どこを探せばいいのかわからない。
どうしようか。
魔界に人間なんて居ていいのだろうか。
もし、居てはダメならば、見つかったら殺されるのか?
ガチャ
一旦部屋に戻る。
「あれ?早いねどうしたの?」
ニコッと笑いかけてくる。
うぜぇ。
「もしかして、人間が魔界にいたら、殺される?」
「うーん、まぁ殺されるかもね。」
「先に言えよ。」
ボソッと緋色がそう呟く。
「じゃあ、お面でもつけたら?」
「そんなものどこにあるんだよ。」
「あと、その服も人間の制服だとわかるから、変えた方がいいよ。」
「着替える服なんてどこにあるんだよ。」
「じゃーん!ここにありまーす。」
そう嬉しそうに言って、服とお面を緋色に渡すセト。
「‥‥‥ありがとう。」
「僕は制服も好きだけどね。」
「着替える、どこで着替えればいい?」
緋色がそう聞くと、妙にニヤけるセト。
「‥‥冗談だろ。」
緋色が苦笑いでそう言った。
ここで着替えろってことか?ふざけるなよ。
「‥‥‥別にいいじゃん、夫婦になるんだし。」
「ならねぇよ!」
大声で否定する。
どうする‥‥‥こいつの前で着替えたくないし、ていうか夫婦にだってなりたくもない。
でも、着替えなきゃ薬を探しに行けない。
薬がなかったら、どうなるかわからないし、死ぬかもしれない。
だったら‥‥‥
「出ていけ!」
「えー、ここ僕の部屋‥‥。」
「早くしろ!じゃないと‥‥えーと、もう一回ぶっ叩く!」
「もー、野蛮だな緋色。しょうがないなー、出て行ってあげるよ。」
そう言って、セトが部屋を出る。
「はぁ‥‥」
実は、俺は体のどこが悪いのかわからない。
薬の効果も薬を飲み忘れたら、どんなことがあるのかもわからない。
わからないから‥‥怖い。
「ふぅ、着替え終わった。」
ガチャ
部屋を出る。
「入っていいぞ。」
外で待っていたセトに緋色がそう言った。
「はーい。」
セトが部屋に入る。
「じゃあ、俺行ってくるから。」
そう言って、緋色が薬を探しに行く。
部屋の外は、人間界のような普通の街並みだった。
どうやら、悪魔は人間とさほど変わらない見た目をしている。唯一違うのは、髪色や目の色が非常に綺麗で透き通っている。
全体的に若い、人間の肉も食う時があるらしい。
人間の形に近いほうが強いらしい。

とりあえず、薬を探しにいかなきゃいけない。
「あれ‥‥あなたは、あの時の‥‥。」
後ろから声がした。
なんだか聞いたことがあるような声だ。
どこだったけな‥‥。
結構最近だったような‥‥。
振り返ってみる。
話しかけてきた人は、綺麗で顔が整っている男だ。
「どうか、したんですか?」
「思い出せない‥‥あの、俺と会ったことありますか?」
「あー、まぁ、あります。」
「どこでですか?」
「学校っていうところで、あなたの傷をリカールが治している時にいました。」
「リカール‥‥って、誰ですか?」
「リカールは、あなたをここに連れて来た、白っぽい金髪の男です。」
なぜリカールと呼ばれているかわからないが、セトのことか‥‥。

セトが俺の怪我を治した時ということは‥‥
「あー、あのときの‥‥謎の声の人。」
「は‥‥い。」
微妙に顔が引きつっている男。
静まり返って、お互いがお互いの目を見つめる。
何も言えない。
薬を探しに行かなきゃいけないのに‥‥
「あの、そろそろ行きますね。」
そう切り出したのは、緋色だった。
「あっ、‥‥‥はい。どうぞ。」
「あの、名前を聞いてもいいですか?」
「私の名前は、フィース・ファーストです。フィーとお呼びください。」
「あぁ、よろしく。フィー‥‥さん?」
「フィーでいいです。」
「じゃあ、俺そろそろ行くから、またなフィー。」
「は‥‥‥い。」
敬語使うのもアレかと思って、タメ語で話したけど、なんか顔がポカンとしている。
ダメだったかな。
「‥‥‥タメ語、ダメでした?」
そう恐る恐る聞いてみると
「いや‥‥あの、敬語以外で話してくる人が‥‥少ないので‥、その‥‥なんと言うか‥‥嬉しいです。」
どうしよう、可愛い!
「フィー、お前めちゃくちゃ可愛いな!」
「は?!」
驚いた顔で赤くなるフィー。
かわいい!
けど、早く行かなきゃ。
「じゃあ、行くな。」
「あっはい、行ってらっしゃい。」
ニコッと笑うフィー。

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