捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 風化されることのない痛みは、これから一生俺のことをむしばみ続けるだろう。

 ――お金持ちの社長さんなんだ。

 あの日、待ちきれずに翠のウエディングドレス姿を見に行こうとしなければよかった。そうすればあんな言葉を聞くこともなかったというのに。

 ――これからたくさん贅沢させてもらえるよ。

 愛していた分だけ、悲しかった。同じ気持ちではなかったという事実が目の前を真っ暗にして、まともな思考を奪っていった。

 だから結婚式を迎えずに――彼女の前を去ったのだ。

「……ん」

 翠が顔をしかめて寝返りを打とうとする。

 俺に触れられることを拒んだように感じ、思わず肩を掴んでしまった。

 爪の先に襟が引っかかり、白い首筋が露わになる。そこに付いた痕は、先ほど俺自身が刻んだものだ。

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