捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 裾を引きずらないようにするのはさすがに難しく、手で太ももの辺りの布地を持ち上げながらドアの方へ向かう。ノブに手をかけて廊下へ出ると、勢いよくなにかが突っ込んできた。

「うあああああ」

「鳴?」

 顔を真っ赤にしながら飛び込んできたのは鳴だった。既に準備は終えていたらしく、ぴしっときれいにタキシード姿を決めている。

「鳴、どうしたの」

「うええええん」

 しがみついてくる鳴の側に屈んだのとほぼ同じタイミングで影が差した。顔を上げると、やはりシルバーのタキシードに身を包んだ涼さんが立っている。

(――かっこいい)

 うっかり見とれかけた自分を慌てて『母親』の意識に引き戻す。鳴がこれだけ大泣きしている状態で夫に惚れ直している場合ではない。

「なにがあったの?」

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