悪戯 ―イタズラ―


「そうですね。死んで下さい」


――――!?


「自分で死んで下さい。それができないなら。僕が。あなたを殺してあげます」

「な……」

「今夜ここで死ぬんです」


2人きりの社内。

叫んだところで、誰もこない。


「や、」


逃げ出そうと一歩踏み出す隙も与えてはくれなかった。


押し倒され、馬乗りされ、大きな手で口をふさがれる。


私、ここで死ぬの?


愛も知らないまま。


そう思うとカラダから力が抜けていく。


…………なに、してるんだろう。


田舎暮らしが嫌で都会に出てきて、夢も目標もなにもなくて、キラキラして見えた男は天使の仮面を被った悪魔だった。


今ならわかる。


生まれ故郷で出会った人たちのあたたかさ。


すれ違えば笑って挨拶しあえたあの町に、帰りたい。


だけど帰れない。


「もう抵抗しないんですね」
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