ウルルであなたとシャンパンを
きっと、シドニーの人もそう思ったから、この街並みを大事に守ってきたに違いない。
こんな素敵な街があったなんて、知らなかった。
ほう、と幸せな、昨日までとは温度の違うたため息を漏らすと、隣から柔らかい響きの声が香耶を呼んだ。
「……カヤ?」
その声に、あ、と、香耶は1人ではなかったことを思い出す。
「ごめんなさい、あんまりステキだから見とれちゃって」
素直にそう笑って隣を見上げると、不思議そうな顔をしたルカが軽く首をかしげた。
「来てからずっと、ここにいたんじゃないの?」
「そうなんだけど……」
最初の日も、昨日も、景色なんて見ようとも思わなかった。
そのことを伝えるべきか、どうしようか……
迷ったのは、ほんの一瞬で、香耶は自分でも驚くほどにさらりと事実を口にしていた。
「着いた日はそのまま寝ちゃって、昨日も外なんか見ずに出かけちゃって……こんなふうに景色を眺めたりしなかったの」
「……そうだったのか」
なるほど、とでも言うようにルカが首の角度を元に戻すのを見て、これまたするりと思ったままの気持ちが口をついて出た。
「だから……ルカのおかげ。ありがとう」