【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「では、クラウトで決まりだな」
フェルゼンは不服そうな顔をした。
「気を付けろよ」
「うん、そっちもね」
私が先頭になって森の中へ入っていく。さすがに大規模討伐が出るくらいだ。森の中がいつにもまして禍々しい。チラチラと森の奥で動物の赤い目が光っている。いつもとは違う、気の立った気配がする。モンスターの瘴気の影響を受けているのだ。
私は小さな川に沿って歩いた。この小川は、アイスベルクの湖が水源になっている。清らかな水で、瘴気の影響を受けにくい。私はいつもこの小川を目印にする。よく知っている道だ。
少し行くとポッカリと空いた自然の広場にでる。
「ここで薪を拾おう」
声をかけると、クラウトがムッとしたように私を睨む。
「なんでアナタが仕切るんですか?」
「当たり前だろう? 彼が一番ここに詳しい」
私が答える前にシュテルが答えて、クラウトはむっつりと押し黙った。
「あんまり森の奥へ入らないで。お互い見える範囲で。今日はなんだか動物の気配がおかしいから」
「わかった」
シュテルは短く答えて薪を拾い始めた。
私は近くの草を集めて、小川の水で手を濡らし、縒り合わせる。