【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「助けてくれてありがとう、シュテル」
「どういたしまして」
シュテルは珍しく照れたように笑った。
それから数日、私たちはアイスベルクの騎馬隊に世話になった。
森のモンスターは、サラマンダーを退治したことで急速に勢いを失い一掃されたそうだ。あのサラマンダーが今回のボスだったのだ。
一度退避を迫られた士官学校の生徒たちは、そのことがよほど悔しかったのだろう。掃討戦でかなりの功績を上げたらしい。
アイスベルクの騎馬隊たちも一目を置く働きだったとウォルフから聞いた。
私はあれから付きっきりでシュテルの看護をした。
おかげで軟膏の塗り方と包帯の巻き方は上手くなった。
シュテルの広い背中には、うっすらとだけれども、ミミズ腫というにはいささか大きい傷がまだ赤く残っている。
そして今日は士官学校へ戻る日だ。
今日もその背中に軟膏を塗る。筋肉のついた大きな背。角ばった肩甲骨。三角筋のふくらみ。テントの隙間から降ってくる朝日を浴びて、男らしい身体が煌めいていて、見慣れているはずなのになぜだか胸が苦しくなる。
包帯を巻きつけようと脇から前に手を回せば、その手を強く引かれるから、思わず顔が背中にぶつかった。