【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

16.シュテルの背中とその匂い


 なんだか最近の私はおかしい。
 自覚がある。

 討伐訓練を終えてから、シュテルの顔がまともに見られない。
 今日も約束通り、薬を塗りにシュテルの部屋へ行くけれど、それだけで心臓がバクバクと音を立てる。
 本当は行きたくない。
 でも、代わりに誰かに任せるなんて、もっと嫌だ。
 
 挙動不審になりながら、シュテルの部屋に行こうとすればフェルゼンが変な顔で私を見る。見てるのがわかるから、逃げるようにして部屋を出る。別に悪いことをしているわけではないけれど、なんなんだろう、この後ろめたさは。
 初めの頃は一緒に行こうとしてくれたけど、シュテルが怒ったので以来連れて行かない。多分、私の前では平気な振りをしているが、背中の傷など見られたくないのだろう。

 ノックをしてシュテルの部屋に入れば、シャワー上がりの濡れ髪の王子が、見目麗しく微笑んでいる。
 濡れたウエーブの金髪が無駄に光を放っていて眩しい。拭き切れていない雫が鎖骨を伝って落ちる。目の毒だ。
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