【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 シュテルって……、なんか、こんな……なんていうか、色っぽい感じだったっけ?

 自分の知っている、小さい頃の天使様とはだいぶかけ離れてしまったと、視線をそらしてため息をついた。

 子供の頃のシュテル、本気で可愛いかったんだけどな。

 初めて出会った厩舎の前で、私はシュテルを天使と見間違えたのだ。あの一瞬は忘れられない。

 フワフワにカールした金髪。それとお揃いの金の瞳は光の加減で緑にも見えて、その色を見ているだけで幸せになれた。柔らかなクリームのようなほっぺたは、食べたくなるような桃の色。控えめにこちらを伺っている様子は妖精のように可憐で、同じ人間だとは思えなかったのだ。

 それが今や……。悪魔にしか思えない。

 私は思考を停止した。鉄仮面を被る。最近シュテルは私をおちょくって楽しんでいるところがあるのだ。心を強く持たなければ!
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