【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 その後取り調べの結果、ザントはマレーネ姫に危害を加えられないと判断された。手紙は自身が婚約者候補に上がったことに感情が振り切れて、思わず出してしまったもので、そんなに不審に思われているとは考えてもいなかったらしい。なんでだ?
 今回の騒ぎも、『姫とメイドの仲良さに結婚祝いのフラワーシャワー』という意味のわからないことを供述しており、マレーネ姫が不問にするとのことで、かたがついた。良いのか?
 どちらにせよ、姫を信仰しすぎて、近寄ることはおろか、話さえできないくらいなのだから、危害など加えられないだろうと判断された。

 私は姫に頼まれて、交換日記をザントへ渡しに来た。犯人が拘束されて安心した姫様たちは、晩餐会の最中だ。
 ザントは私を見ると、先ほどとは打って変わった冷静な物腰で笑いかけた。

「やあ、メイドさん」
「まるで別人みたいですね。さっきのは何かの策略でしたか?」
「マレーネたんがいない、単体メイドさんには興味ないんで」

 ああ、そうですか。いっそ気持ちがいい。

「それにいつもあれだと仕事にならないでしょう」

 ごもっとも。
 私はため息を吐き出した。
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