【web版】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(コミカライズ:男装令嬢が性別を隠して士官学校に入学したら、王子様と騎士様が執着してきます)
花火を見るためにホールの窓が開け放たれたのだ。
ベルンは無言で空を眺めている。
花火の星の消え口がチラチラと空に落ち、ベルンの顔がハラハラと陰る。その儚さに僕は見蕩れて、思わず息を呑む。
息のひとつでかき消えてしまいそうで、それでいて花火のように眩しくて。
一瞬でも長く名残の火がとどまるよう息を止める。
闇に消えゆくベルンの向こうに、フェルゼンの瞳が光った。
僕と同じように息を止め、空を見上げるベルンを見ている。
見てはいけないものを見た、なぜかそう思い瞼を伏せた。
花火の煙が風に乗り、こちらまで漂ってくる。
「ほら次だ!」
ベルンのあどけない声に再び瞼を上げる。
彼は空を指さし、僕らのどちらのことも見ない。大輪の花が咲き、ベルンの笑顔も花開く。
「綺麗だね!」
彼の瞳に花火が瞬く。
眩しくて、切なくて、苦しくて。どうしてそんなふうに感じるのか、僕には全然わからなくて。
「……うん」
絞り出した声からは、コーヒーヌガーの香りがした。