【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 俺は茫然としていた。息もできないくらい胸が苦しくなって、鼻に水が入ったみたいに痛くなった。あの湖の中にいるよりも苦しいと思った。
 アイスベルク侯爵は俺を見て、穏やかに笑った。もう冷たい目線ではなかった。
 そして、俺の頬をゆっくりと撫でた。温かい手。

「君まで泣かしてしまったね」

 そう言われて初めて、俺は泣いていることを自覚した。
< 78 / 408 >

この作品をシェア

pagetop