ロマンティシズム
◇ふたりでおいしいケーキを選ぼう♪

 常日頃抱いている妄想よりはかなり地味にしても、充分にドラマティック、願ってもいない展開に夢見心地の雪野ちゃん、は数分後、有名洋菓子店の客の列に並んでいた。

右の手には、パウダーブルーのカードが握られている。

瀬戸はそれをサイフから出し、雪野に渡したのだ。さっき。

 そして、

「もらっておいてくれ」

 言い残して消えた。

「えー……」


 人混みにのまれていく黒いコートに、雪野は声をかけられなかった。

咄嗟に思いつかなかったのもあり、施されてきた絶対服従の弟子ルールのためもあり。
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