ロマンティシズム
 クリスマス特集でも見ていた。
ネットでは都内のケーキの予約状況も、見かけていましたとも。

よれば人気のブレイクニー、十二月に入る頃には満員御礼の札が下がっていたように記憶、しているのだけれど。

 天井から下がる看板の、『引換券のない方には販売できません』の文字を見る。

うーむ。
早々に予約した人間だけが持つこのカードを、何故瀬戸が持っているのか、は、大変な謎なのではないだろうか。

 首を傾げて考えてみるが、ピタリとはまる答えは出ない。

実は彼女の命令だとか。
そんな結論は気に食わないから、早々に排除。

『彼女という存在』に命令される瀬戸も、言うことに従う瀬戸も、想像できない。したくない。

 それに万が一彼女がいたとして、二人で食べるケーキを買うのに、他の女を並ばせたりはしないだろう。



 ……他の女。
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