The Math Book

 それでも中学にいる男子たちのことが頭をよぎった。

 まさか、始めからいきなり男の先生になるなんて思ってもみなかった。

 でもこれからやり切るしかない、でも怖い。


 いろんなことが頭をよぎっていたけれど立ち尽くしているだけでは始まらない。

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 互いに挨拶をし、頭を下げた。

 その時の先生のぎこちない笑顔を今でも忘れていない。
 
 
 きっとあの先生もいやなんだろうな、こんな私だから。
 

 マイナス思考に走りがちな私はすぐに彼に対する申し訳なさでいっぱいになった。
 
 よりによってなぜ男の先生になったのか。私も怖いけど先生も可哀想。
 この先どうなるのか怖い。

 男子に対して偏見を抱えていた私は教室に案内される時、かなり警戒していた。
 
 不安な気持ちでキョロキョロあたりを見回す。
 まだ早い時間だったせいかあまり人の姿は見当たらなかった。

 
 案内されたのは一番奥にある狭い教室。たまたま生徒は私1人だった様だ。
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