The Math Book

「はい、もうわかりましたよ。絶対来ませんからね」

「いや、来てよ!待ってるんだからさ!」

「嘘です。多分来ますよ、多分ですけどね」

「絶対来てよ。じゃないと許さないから」

 教室を出て受付についた時もZ先生は私がちゃんと塾に来るのか心配して声をかけ続けた。

 そのやりとりがあまりにもおかしくて周りの先生たちもクスクス笑っていた。

 私は呆れた顔をしながらZ先生に笑った。
 
 ムーミンみたいにほんわかしているのに意思だけは強いんだな、Z先生って。

 そしてZ先生に塾の扉を開けてもらった。そして最後のとどめの言葉を刺された。

「じゃあ、明日の5時ね、絶対に来てよ。じゃないと困るから」
 
 もうこれ以上、遅延でダッシュして塾に来たZ先生を困らせたくはなかった。
 
 だからしかたなく、

「はい、わかりました。」

 と返すことしかできなかった。

 
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