The Math Book

 変人だった私も実は一度だけ恋をした。同じ学校の同級生に。
 
 これが恋だってわかった時、誰かに自分の気持ちを知ってもらいたくて気がついたら自分が恋していることを母親と祖母に話してしまっていた。

 今思えばあまりにもばかけた行動だが、恐らく当時の自分は恋と上手くやっていく方法がよくわかっていなかったのだと思う。
 
 それにしてもずいぶん長い片思いであった。三年生の頃から卒業までの三年間、ずっと片思いをしていた。いつかドラマや小説に描いた様な恋ができるのではないかと小学生の私は思っていた。
 
 でも自分から好きですなんて、怖くて言えなかった。ただ向こうから好きっていってくれるのではないかと期待し続けた自分がいた。
 
 月日だけが流れていき、結局虚しく卒業を迎え、あれから一度も話すことは愚か、会った覚えすらない。彼は今どうしているのだろうか。たまに思い出すと胸が締め付けられる感覚に陥る。
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