冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「ありがとう、リアム。あのとき、私たちを見つけてくれたのがあなたで……本当によかった」
あの日、戦火の上がる城下町を見ながら、リリーたちは途方に暮れていた。
いつ、自分やオリビア、そしてソフィアにも命の危険が及ぶのか不安で、その不安を払うためにもエドガーのもとへと単身で向かうしかないと覚悟を決めた直後だった。
「あのとき、あなたが現れてくれたから、私たちは三人は今、一緒にいられる。そう考えるとね……不思議と、もう、あなたのことは怖くはないわ」
リリーのその言葉を聞いたリアムは、背後のリリーを視線で振り返ろうとした。
と、側面の壁に備え付けられていた鏡に、自身の背に頬を寄せるリリーの姿が映っていることに気が付いたリアムは、思わずそこで視線を止める。
「──っ!」
リアムは、あることに気がついた。
今、リリーは自分が贈ったペリドットのイヤリングを身につけてくれていたのだ。
月の光をまとって輝くそれは、彼女の美しいオリーブ色の瞳を彷彿とさせ、リアムの胸は高鳴った。
リリーの瞳の色と同じ、ペリドットの美しいイヤリング。それはあの日、あの場所でリリーに再会し、オリビアを見つけ、彼女たちのために何かできることはないかとリアムが用意したものに違いなかった。
けれど肝心のリリーには血濡れた手で……と糾弾され、直接渡すことができなくなったものでもあった。
リアムは改めて、自身の手のひらをじっと見つめた。
これまでリアムは騎士団長という地位につくため、多くの修羅場をくぐり抜けてきた。
だからあのとき、リリーに『あなたの手は血で濡れている』と言われても、全く反論ができなかったのだ。
実際、リアムはリリーの言うとおりだと思った。
自分の手は汚れている。だから、リリーにもオリビアにも触れる資格はないと、黒い呪いを受けたように、今日まで胸に強く刻み続けた。