冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「私は、あなたのように自分の手を汚す勇気もないくせに、いつだって綺麗事ばかりを並べて聖人ぶっていただけよ。本当に卑怯者だったのは、この私だわ。私の方こそ、罪深い人間よ」

「……っ、それは違う!」


 けれど、続けられたリリーの言葉に、リアムは反論を口にすると、咄嗟に彼女の腕を解いた。

 そして振り返ると改めて、涙を浮かべたリリーと正面から対峙する。


「リアム……?」

「リリー、きみが罪深い人間だなんてことは、絶対にあり得ない。きみは何年も、孤児院の子供たちのために働きかけてきたんだろう? 無情な父に反対されても怯まず、彼らを守るために、軽蔑している男の妻になろうとまでしていた」

「え……どうして、それを……」


 告げられたリアムの言葉に、リリーは涙で濡れた目をハッと見開いて固まった。


(どうして、リアムがそのことを知っているの?)


 リリーの問いに、リアムは一瞬、『しまった』という顔をしてから、リリーのオリーブ色に輝く瞳から視線を逸らすと言葉を続けた。


「き、きみの侍女の、ソフィアに聞いたんだ」

「ソフィアから……?」


 いつの間に、ソフィアと話しをしたのだろう。

 けれどソフィアから聞いたのなら納得だと、リリーはそれ以上、その疑問に触れることはなかった。


「だから、きみは……リリーは、卑怯者なんかじゃない。本当に批判されるべきは、自らは高い位置に置かれた椅子に座り、苦しい思いをしている人々の声に耳も貸さずに自らの欲求を満たすことだけを考えている、欲深き人間たちだ」


 苦々しい口調で言ったリアムに、リリーはバツが悪いといった顔でまつ毛を伏せた。


「それはまるで、お父様ことね……」


 胸に手を添えたリリーは、震える息を静かに吐き出す。

 思い出すのは父であるウォーリック国王のことだ。

 昔から民への慈悲もなく、自らの権力を振りかざして大国にのし上がろうと躍起になってばかりの人だった。

 
< 106 / 169 >

この作品をシェア

pagetop