冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「お、お父様……!?」


 そこにいたのは間違いなく、リリーの父であるウォーリック国王だったのだ。

 しかし、すっかりと頬は痩せこけ、白い髭が伸びてはいる姿は、まるで別人のようだった。


「ど、どうしてお父様がここに──」


 それでもリリーが父である国王を見間違えるはずもなかった。

 リリーの父であるウォーリック国王は、約一ヶ月前にグラスゴーがウォーリックに攻め入って来た際に、その姿を消していた。

 そして、国王がいなくなったせいで、兄のアイザックはラフバラの一部のものから疑いの目を向けられる羽目になったのだ。


(でもまさか、お父様がグラスゴーの地下牢に閉じ込められていたなんて……)


 呆然と立ち尽くすリリーを前に、ウォーリック国王はガックリと項垂れながら事の顛末を話し始めた。


「ことの始まりは、そう、あのグラスゴーがウォーリックに攻め込んできた日だ。実はあの日、私はグラスゴーがウォーリックに攻め込んできたことを機に、エドガーと取引をしようと動いたんだ」

「エドガーと取引を?」

「ああ。あのときグラスゴーのみならず、ラフバラの聖騎士団までもがウォーリックにやってきたことを知り、このままではラフバラに捕らえられ、国を乗っ取られるに違いない。そう踏んだ私は、〝妥当ラフバラ〟という志を同じくするエドガーのもとへ、協定を持ちかけるために逃げ込んだ」


 つまりリリーの父は、ラフバラが敵であるという思い込みだけを胸に、エドガーのもとを尋ねたというわけだ。

 使者を使わずに自身がグラスゴーまでやってきたというのは、ラフバラ聖騎士団に自分が捕らえられるのを恐れてのことに違いない。

 それほどリリーの父であるウォーリック国王はラフバラに強い恐れを抱いており、とにかく反撃ののろしを上げる一手に執着していたのだろう。


「しかし、エドガーは私の要求を突っぱねたのだ。ウォーリックとグラスゴーが手を組むのではなく、ウォーリックはあくまでグラスゴーの支配下に置かれることと思えと私に言って……」


 悔しそうに下唇を噛みしめた国王は、牢屋の鉄格子にやせ細った拳を叩きつけた。

 
< 134 / 169 >

この作品をシェア

pagetop