冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
片目を隠していたのは、黒髪に灰色の瞳というのがラフバラの前国王を連想させるものだったから。
けれど戦場で傷を追った兵士を装ったことで、周囲の同情も買うことができ、更には自分には王宮内の見回りしか務まらぬという名目ができて一石二鳥だったということらしい。
「スパイという危険な責務を負うことで、俺が王位などには興味がないということを、ラフバラの王宮内に知らしめることができた」
当時、ラフバラの王宮内には、リアムが姑息な手を用いて王位を狙っているのではないかという憶測が広まっていたという。
しかし、リアムは自らスパイという任を負うことで、自分を疑うものたちの目を変えることができたのだ。
「そもそも前にも言ったとおり、俺は王位に興味がなかったしな。そして……結果として、あの晩、きみに出会えた。すべては運命の導きだったように今では思う」
そこまで言うとリアムは、再びリリーの頬に唇を寄せた。
話の合間に注がれる甘いキスに、リリーはつい身を委ねそうにもなったが、慌てて彼の胸を押し返すと自身を見つめる二色の瞳を見つめ返した。
「……でも、あなたは私を抱いたあと、姿を消したわ。それは、どうして?」
「それは……きみから、きみがエドガーのもとへと嫁ぐという話を聞いたからだ。当時の俺の任務は、ウォーリックの動向を探ることだった。だから、きみがエドガーに嫁ぐことで、ウォーリック国王がラフバラを裏切ろうとしていることを、どうしてもすぐにラフバラ国王に伝えに戻らねばならなかった」
つまりリアムは、当時、リリーから父であるウォーリック国王がラフバラとの和平を袖にし、グラスゴーと手を組もうとしていることを早急に報告するために、ラフバラへと戻ったのだ。
「それからしばらく、その話が本当に動き出すのかをラフバラ国内で注視していた」
「でも……私が不治の病に侵されたという話が、近隣諸国に広まったことで、情勢が変わったのね」
「ああ、そうだ。それが原因で、きみとエドガーとの婚姻の話もなくなり……。結果として、ウォーリックがラフバラを裏切るという話も断ち消えた」
仮にもし、話が断ち切れなければ、ラフバラはいつでもウォーリックを攻め落とす準備のひとつもしていたに違いない。