冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「じゃあ、やっぱり、あの婚姻話はなくなって正解だったのね」

「……ああ。しばらくして、リリーが亡くなったという話を聞いたときには、身が引き裂かれるような思いだったが。結果としてあのとき、きみがエドガーのもとへと嫁がなくなったことで、多くの命が救われたのは事実だろう」


 リアムの言葉を聞いたリリーは、今更になって自分の選択が正しかったことを思い知った。


「だが、さすがのラフバラも、きみが生きていたことまでは知らなかった」


 それは、リリーの真実は、ウォーリック王宮内でも一部のものしか知らない機密だったからだ。

 さすがにラフバラ聖騎士団の力を持ってしても、それを暴くことはできなかったのだろう。

 兄のアイザックも、まさかリリーの子であるオリビアの父がラフバラ聖騎士団の隊員だとは思わず、リリーの存在はリアムにも知られることはなかったのだ。


「きみが生きてさえいれば、たとえエドガーの妻になろうと、きみを奪いに行っただろう。だが、きみはいなくなってしまった。あの日の絶望は……もう二度と、味わいたくはないと思うほどの、恐怖だ」


 リアムはそう言うと、リリーの細い身体を力いっぱい抱きしめた。

 そして、もう逃さないとばかりに、再び彼女の耳元へと唇を寄せる。


「だからあの日……あの場所で、きみと再会したときには夢でも見ているのかと思ったよ」

「……何故あの日、あなたはあの場所にきたの?」

「ウォーリック国王に書状を届ける前に、もう一度だけあの場所をどうしても訪れたかったんだ。俺はあの日、きみに誓った約束を果たすために騎士団長という地位まで上り詰めた。だからあの場所で……亡ききみに、もう一度誓いを立てようと考えていた」


 けれど結果としてリリーが生きていたことを知り、リアムはリリーをラフバラへと連れ帰った。

 そして自分が幼少期を過ごした特別に思い入れのあるこの邸で、リリーたちを大切に匿ったのだ。

 
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