冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「だ、だって、彼はそんなことは一言も言っていなかったんだもの!」

「……そうだっだんですね。でも、今俺が言った通り、リアム様が名も無き贈り主さまであったというのは本当ですよ。リアム様は幼少期にここで過ごされた際に使用した服や書物を、あの孤児院に届けてくださっていたのです」


 幼い頃のリアムは、王宮内で蔑まれてはいたがそれなりの施しを受けていたのだ。

 王の息子であるのなら当然と言えば当然のことだが、まさか当時の服や書物を、リアムがローガンに命じて、孤児院で暮らす子供たちへと届けていたなど、想像もできないことだった。

 その上リアムは、それ以外にもフルーツや、新しい洋服や書物も届けてくれていた。

 そう考えるとリリーとリアムは、出会うべくして出会ったに違いないのかもしれないと、リリーは今のロニーの話を聞きながら、そんな風に考えた。


「リアム様は騎士団に志願されてから、自分たちとの戦いのせいで家や家族を失った子供である俺達のことを気に掛けてくださっていたんです。俺も、最初にリアム様のところに連れて行かれたときには本当に驚きました。でも今は、あのとき勇気を出して、前に足を踏み出してよかったなと思っています」


 ヘヘッと笑ったロニーの笑顔は晴れ晴れとしたものだった。

 リアムは昔から、敵味方関係なく、戦争によって苦しんでいる子供たちを救うべく動いていたのだ。

 ラフバラの聖騎士団の隊員である彼が、無関係のウォーリックの孤児院に支援をしてくれていたのが何よりの証拠だ。


『いつか……世界中の子供たちが安心して眠れる夜がくるように、俺も毎日願っている』


 あの日、彼が口にした言葉に嘘はなかった。

 改めてそれを知ったリリーの胸は熱くなり、リアムを知れば知るほど、彼への想いは大きくなる一方だった。


「……随分と、仲が良さそうだな」


 と、噂をすればリアムが、オリビアを肩車しながらふたりのそばまでやってきた。

 不機嫌そうな彼の様子にロニーはほんの少し焦っているようだったが、リリーは彼の秘密を知って、たまらなく誇らしい気持ちで微笑んだ。

 
< 160 / 169 >

この作品をシェア

pagetop