冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「あ……」
男は、ウォーリックの衛兵の鎧を纏っていた。つまり、城内を警備しているもののひとりなのだろう。
「もしや──貴方様は、リリー王女?」
そしてリリーが気がついたのとほぼ同時に、男もリリーが自身が仕える相手であると気がついたようだった。
「え……ええ、そうなの。驚かせてしまってごめんなさい」
リリーが暗がりでそう言って笑うと、男はすぐにその場に跪いた。
「こちらこそリリー王女であると気づかず、無礼を働き、大変申し訳ありませんでした……!」
凜とした声があたりに響く。
リリーは他の衛兵に声が届いてしまうのではないかと肝を冷やしたが、今、この場所には自分と男以外の人間はいないようで、胸を撫で下ろした。
「この周辺は城壁も高く、外の堀も深いため、普段も衛兵ひとりで見回るので十分という場所でして、まさかリリー王女様がいらっしゃるとは思わず……」
「い、いえ! こんな夜更けに、こんな場所を王女がウロウロしているほうがおかしいのよ! だから、どうか貴方は謝らないで? それよりも、こんな時間まで私達のために尽してくださって、本当にありがとう」
リリーは男のそばまで駆け寄ると、深々と頭を下げる男と目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「ね、だからどうか頭を上げて──」
すると次の瞬間、ゆっくりと顔を上げた男と目が合う。
けれどリリーは男の顔を見るなり、思わず言葉を失った。