冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
(ああ、きっと彼も父が起こした戦争の被害者に違いないわ。きっと、戦争で右目を負傷して……。父が、この人の右目の光を奪ったのね)
「……謝るのは、私のほうです」
「え?」
「父のせいで貴方たちに辛い思いをさせて、本当にごめんなさい」
そう言うとリリーは、大きな瞳から大粒の涙を溢した。
そして自身に跪く男の手を、そっと優しく包み込んで息をつく。
「貴方に苦しい思いをさせて、本当にごめんなさい……っ」
リリーは何度も何度も謝罪の言葉を口にした。
今、自分にできることはそれしかないと思ったのだ。
対して男は、自分よりも遥か高い地位にいるリリーに謝罪をされると思わず、困惑しているのか動揺を隠せない様子だった。
「ど、どうして王女様が、ただの衛兵のために涙なんか──」
と、男は言いかけた言葉を慌てて飲み込む。
リリーはまた「ごめんなさい」とつぶやいてから、涙で濡れた瞳で男を見つめた。
「貴方が役立たずなんてことは、絶対にないわ。見苦しい姿だなんて……そんなこと、絶対に思わない」
涙とは正反対の、凜としたリリーの言葉に、男は思わず息の仕方も忘れるほど戸惑った。