冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

(だって、まさか。まさか、そんなはず──)


 顔色の悪いソフィアと、難しい表情で何かを言い淀んでいる医師を前に、リリーの脳裏にも〝あること〟が過ぎった。


「そのご様子ですと……思い当たる節が、おありなのですね?」


 医師が、遠慮がちにリリーに尋ねる。

 それにリリーもソフィアも頷いたわけではないが、即座に否定をしなかったことが、医師からすると質問の答えになっていた。


「お話を聞く限りでは、リリー様は、ご懐妊されている可能性が高いです」


 そして次の瞬間、医師からハッキリと診断が告げられる。


「ああ……っ、なんてこと……!」


 即座に顔を覆い隠して崩れ落ちたのはソフィアだ。

 対してリリーは一瞬呆然としたあとで、そっと自身のお腹にあてた。


「私のお腹の中に……赤ちゃんが?」


 つまり、ここ最近の体調不良は心労がたたったことが原因と言うわけではなく、妊娠したことによって起きた悪阻のせいだったのだ。


「私の中に……小さな、命が」


 言葉と同時に、リリーのきれいな瞳から大粒の涙が一筋、頬を伝ってこぼれ落ちた。

 今、リリーのお腹に宿っているのは間違いなく、あの男との子供だ。

 あの夜、まるで壊れ物を扱うようにリリーを抱いたあの男との子供が、確かにお腹の中にいる。


「もちろんこのことは、医師というだけでなく、長年この王宮にお使えするものとして、絶対に口外いたしません」


 医師からすれば、とんでもない面倒ごとに巻き込まれたという思いもあっただろう。

 対してリリーは、そんな医師に「ありがとうございます」と告げると、ゆっくりと顔を上げた。

 
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