冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
(奥の小屋では愛娘のオリビアが眠っている。だから、早くこの場を切り抜ける方法を考えなければ――)
「おかーたま……?」
「……っ!」
そのとき、リリーの願いも虚しく、聞き慣れた可愛らしい声が彼女を呼んだ。
勢い良くリリーが振り返れば、小屋の中で眠っていたはずのオリビアが、目をこすりながらトコトコとこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「おかーたま? そふぃー?」
「で、出てきてはダメ……!」
「え……わぁっ! おうま! おっきい!」
けれど、リリーの焦りもなんのその。
無邪気なオリビアは、リアムが乗ってきた黒馬を見つけると、興奮した様子でオリーブ色の瞳を輝かせた。
この花園から出たことのないオリビアは、馬を見るのは初めてだったのだ。
「ダ、ダメです、オリビア様っ! その馬にも、騎士にも近寄ってはいけません……!」
「オリビア……?」
と、リリーとソフィアの言葉を聞いたリアムは、眉根を寄せるとぽつりと呟いた。
そして目の前の光景を呆然と眺めてから、唐突に何かを確信したようにハッとしてリリーを見やる。
「お母様……。今、あの子は確かに、きみを見て、そう言ったな?」
ドキリと、リリーの鼓動が大きく跳ねた。
リアムに、オリビアがリリーの娘であると知られてしまった。
オリビアは、まだ二歳半に満たない年齢だ。
嘘をつくことすらできない小さな子供が、この場を取り繕えるはずもないが、どうにかしてオリビアだけは守らなければならない。
「ち、違うわ、聞き間違えよ。あの子は……」
焦りで、リリーの動悸は酷くなり、声は震えた。
反対に確信めいた様子のリアムは、どこか興奮を抑えきれないといったように、リリーの答えを待っている。