冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「お兄様は私と同じように、愚かな戦争を嫌っているのよ! だから、ラフバラを裏切ってグラスゴーのエドガーと手を組むなど絶対にありえないわ! ラフバラと和平を結ぶことで、多くの民の命が救われることを、お兄様だって願っているはずよ!」
断言したリリーは、リアムの腕を掴む手に力を込めた。
今、王女として自分にできることはないという事実がリリーは悔しくてたまらない。
「お兄様は……私が幽霊姫となったあとも、私と約束した孤児院への支援を続けてくれた。とても聡明で、優しい人よ。だからお父様がいなくなったことは、お兄様にとっても予想外の事態だったに違いないわ」
唇を噛み締めたリリーは、兄であるアイザックの身を案じた。
今、ウォーリックの内情はどれだけの混乱に満ちていることだろう。
国の危機に姿を消した国民の国王に対する不満は、その息子であるアイザックにも向けられているかもしれない。
ラフバラのみならず国内からも、現王家に対する不信感が募っている可能性は容易に想像できた。
(それでもお兄様のことだもの。きっと、必死に現状を打破するべく動いているはずよ)
困難に立ち向かう兄の心情を思えば思うほど、リリーはたまらない気持ちになった。
リリーがオリビアを身篭って、産み育てていく中でも、兄のアイザックが貸してくれた力は大きい。
実際、オリビアもアイザックに懐いていた。
こんなとき、優しい兄の力になりたくてもなれない自分が情けなくて、何もできないことが嫌になる。