冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「そういうわけで、今すぐにウォーリックがグラスゴーの軍に攻め入られるという心配はないが……ウォーリックの王宮内ではひとつ、大きな問題が生じている」
「大きな問題?」
続けられたリアムの話に、リリーは眉根を寄せて顔を上げた。
「ウォーリック国王が、王宮から姿を消したということだ」
「お、お父様が?」
「ああ。今回、ラフバラがウォーリックを救うために動いたことで、ウォーリックには大きな仮を作ることができた。よって、アイザック王子に代替わりせずとも和平を結べる可能性が出ていたのだが……。肝心の国王が雲隠れしてしまい、その書状は届けられぬままになっている」
リアムがリリーと出会ったときにウォーリック国王に届けようとしていたものが、それなのだろう。
たった今、リアムに告げられた話を、リリーは信じられない気持ちで聞いていた。
「ウォーリック国王が姿を消すというのは、誰も想定していないことだった。そしてそのせいで、ラフバラ国王とアイザック王子との信頼関係にも僅かな歪が生じている」
「え……な、なぜなの?」
「アイザック王子が、国王をどこかに隠したのではないか……。実は代替わりしたあともラフバラと和平を結ぶ気などなく、グラスゴーと手を組み我々を裏切るつもりなのではないかという話が、今回のことでラフバラの王宮内で上がり始めているんだ」
つまり、国王である父が雲隠れしたことで、これまでラフバラ国王から信頼を得ていた兄のアイザックまで、疑心暗鬼の目で見られ始めているということだ。
裏切りの芽はいつ、どこで芽吹くかわからない。
アイザックが何かを企みウォーリック国王を隠して、ラフバラと約束した和平を袖にしようとしているのではないか……と、疑いを持たれているのだ。
「もちろんアイザック王子は無実を訴えているし、早急に国王の行方を捜すと我々には申し出ている。しかし、もしもこのまま国王が見つからなければ、ラフバラは今度こそウォーリックを見限る可能性もあって……」
「お、お兄様は、そのように暗愚なことは絶対にしないわ!」
思わず叫んだリリーは、感情を昂ぶらせてリアムの腕をギュッと掴んだ。
ハッとして目を開いたリアムは、自身の腕を掴むリリーを静かに見下ろす。
今、美しいオリーブ色の瞳は力強い輝きを放ちながら、一心にリアムだけに向けられていた。