冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 


「この孤児院に住む子供たちは幸せです。気高い御心(みこころ)を持つリリー様だけでなく……もうひとり別にも、ご加護をくださる方がいるのですから」


 そのとき不意に、司祭が孤児院の入口へと目を向けた。

 リリーが視線の先を追えば、大きな木箱がふたつ置かれているのが目に入る。

 木箱の前では子供たちがシスターたちと談笑しながら、中身の確認作業をしていた。

 その光景を眺めながら、リリーは確信めいた口調で司祭に尋ねた。


「今年も、届いたのですね?」

「ええ、今年で六年目になりますね。リリー様もすでにご承知の通り、毎年決まって五月に執り行われる豊穣の女神マイアの祭りに合わせてプレゼントが届けられています」


 司祭の返事を聞いたリリーは、「そう……」と小さく相槌を打った。

 箱の中身が数種の果物や子供用の衣服、そして珍しい書物や筆記用具と多岐にわたっているのはリリーも承知のことだ。


「届けてくれた方は、今年も贈り主の名を教えてくださらなかったの?」

「はい。使者は昨年と同じ御方でしたが、やはり例年通り(あるじ)から、〝名乗るほどのものではない〟と伝えるよう命令を受けているので贈り主の正体は明かせない、ということでございました」


 司祭の言葉を聞いたリリーは、まるでサンタクロースのようね、と心の中でつぶやいた。

 【孤児院に毎年届くプレゼント】と、【そのプレゼントの贈り主】は、リリーがこの五年間、ここに通い続ける中で深い関心を持っていることでもあった。

 あくまで推測の域を出ないが、プレゼントの贈り主は、どこかの貴族か王族だろう。


(金銭的余裕のある人間でなければ、こんなふうに毎年プレゼントなど贈ることはできないものね……)

 贈り主が何故、ウォーリック王国の孤児院に支援をしてくれるのかはわからない。

 けれど、質素な生活に潤いを与えてくれる物資はここに住む子供たちにとって、大きな希望に違いなかった。

 
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