あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
ミーナも腰に手を当てて笑う。二人が揃って未来の前に現れるなど、小説を書けと言われた時以来だ。

「どうして二人がいるの?」

未来が訊ねると、「小説を書くのがもうこれで最後だからだ」とミーナが答える。その言葉はまるで未来にとって死刑宣告のようだった。目の前が一瞬暗くなる。

「今日で最後ですから、帆高さんたちとの時間を楽しんでください。そして、願い事を決めてくださいね」

シトロンがそう微笑み、未来は「うん……」とゆっくりと頷く。そしてミーナとシトロンは姿を消した。ぼんやりする未来に声がかけられる。

「未来ちゃん!」

未来が振り向けば、魔女の衣装を着た瑠花が微笑んでいる。その隣にはヒーラーの衣装の英美里がいて、大地が「冒険に行こうぜ!」と笑う。瀧は未来をジッと見つめていて、帆高は「久しぶりけんね」と言った。

「みんな、久しぶり」

この久しぶりの再会が最後になる。そう思うと未来はうまく笑えているか自信がなかった。帆高に対して胸が高鳴り、英美里たちに対して温かい気持ちがあふれる。いつからそうなってしまったのか、未来にはわからない。
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