その声の優しさに包まれたい1

何とかやっとの思いで入り口が見えた。

「エミュー出口だわ!」

エミューは、体の毛が炎で少しちじれていても、お構いなしで全速力で走った。

彩芽と雪也が待っている場所へ。

入り口からエミューが飛び出してきた。

「あっ!」

雪也がエミューを発見する。

「居たぞ!」

「犬もいるぞ!二人共いるぞ!」

口々に叫んだ。

警察や消防の人々も喜んだ。

洋子は軽度だが、煙を吸いながらも、子供達の所へ無事に戻ってきた。

「叔母さんおかえり!」

やっと彩芽が笑顔になる。

ホッとしたのだ。

しかし・・・。

また悲しい涙となる話をした。

勿論、あの男達の話ではなく。

この火災の話のみ。

「いやだいやだ!パパとママの所に行く!」

もう・・・。

涙ながら、洋子は両腕を掴んで。

泣きじゃくる彩芽に対して。

彩芽の両親も雪也の両親も、二度と会えない事、亡くなったんだと伝えた。

あまりにも辛い話。

雪也も、言い聞かせている言葉が刺さり涙が溢れてきた。

「彩芽・・・俺も悲しい。だけど大丈夫。俺・・・。俺、彩芽を守れる男になる!」

涙をぬぐい彩芽に向かっていった。

「・・・守れる男?・・・ひっく・・・ひっく・・・。」

さっぱりわからない彩芽。

「理解できなくてもいい。俺が理解していればいい。」

洋子は、雪也自身もとてもとても悲しい気持ちだ。

それでも生きていかないとならないなら、彩芽を守ろうと言う決意をする事に成長を感じた。

「凄いこと言うのね。そう言われてみたいわ私も・・・。」

これから先、この二人は苦労する事もあると思う。

それでも・・・。

強くたくましく、人にも優しく、笑顔ある幸せを願いたいと思う洋子だった。

エミューと彩芽と雪也は、洋子の家に住む選択が望ましいと警察の人々に言われた。

もう一度強く覚悟を決めた。

住む家は、火災の現場検証や葬式なども行った後。

彩芽の家も雪也の家も取り壊し、荷物全部持っていき洋子と住む。

まだ二人には笑顔が少ないが、当時よりは楽しいって言う言葉も出てきた。

それから月日が経って・・・。

雪也が20歳の頃に一人暮らしを始めた。

ピーチクパーチクと、これがいるやらなんやと言われて、マンション代まで払わされ送り出した。

彩芽は、離れて暮らす事を直前まで教えていなかったので怒った。

それでも。

毎年バイト先から、新幹線に乗り洋子の家でお正月を楽しんでいた。


































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