あたしを撫でる、君の手が好き。

「たしかに、岸はリレーでケガした徳永さんを救護テントに連れて行ってたかもしれないけど……閉会式で倒れたるみのことを保健室に連れて行ったのも岸だよ?」

「え?」

「るみが倒れたとき、そばにいたあたしと富谷のことを押しのけて、るみのことを連れてっちゃったんだよ」

「でも、あっくんはそんなこと何も────」

「言わなかったんだね。あたしはてっきり、そのあとに岸がるみのこと押し倒しでもして、そのせいで気まずくなってるのかと思ってた」

テーブルに肘をついた桃佳がさらっとそんなことを言うから、動揺してハンバーガーを喉に詰めそうになった。


「な、そんなことあるはずないじゃん!」

咽せて涙目になるあたしを見つめて、桃佳が「つまんないなー」と他人事みたいにぼやく。

桃佳はしょっちゅう、あっくんもあたしに気があるようなことを示唆してくるけど……

もしそうだとしたら、体育祭の日にあんなことは起きなかったし、あっくんとの関係だって今みたいに微妙にはならないはずだ。

あっくんは確実に、あたしのことをペットの犬以上には思ってない。


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