あたしを撫でる、君の手が好き。

「シロ、帰って」

「言われなくたって、帰るよ」

やけに切実そうなあっくんの声が、あたしの耳に届く。

そんな声で頼まれなくたって、グループデートの邪魔はしないよ。

せめてもの仕返しとして、あっくんの胸をドンっと向こうへ突き飛ばす。


「行こう、モモちゃん」

「えー、シロちゃん。ほんとに帰っちゃうの?」

「だから、シロは入店不可なんだよ」

「意味わかんないって、それ。シロちゃん、ちょっと!」

「うるせー、富谷」

桃佳の手を引っ張って行こうとするあたしの背後で、富谷くんとあっくんが軽く言い合う声が聞こえてくる。

あたしはあっくんの冷たい声をもう聞きたくなくて。桃佳を引っ張って急いで逃げた。


「るみ、もう大丈夫だと思うよ」

カラオケ店からだいぶ離れた場所まで来たところで、桃佳がクイっと繋いだ手を引っ張って合図してくれる。

< 112 / 227 >

この作品をシェア

pagetop