ボーダーライン。Neo【上】
「それは大丈夫じゃない? 檜くんもカイくんも割とマイペースそうだし、案外あっさり現地解散~とか言われたりして。アハハ、それは困る~」

「もう……」

「大丈夫だって。全然、迷惑そうじゃなかったしさ。むしろ、檜くんは嬉しそうだったよ? 美人のお姉さま方と旅行できるなんてって、今頃ウハウハかもよ~??」

「そんな訳ないでしょー」

 アルコールでテンションを上げる美波とは対照的に、あたしは眉を下げた。

 てんで話にならない。

 美波と並ぶ格好で、ガラステーブルの前へちょこんと腰をおろした。ちょうど背後に置いた二人掛けのソファーに、もたれるようにして座る。手を伸ばし、冷えたビールの缶を取ると、プルタブを起こし、飲み口の穴を開けた。

 それを合図に美波がボソリと呟いた。サチさ、と言われ、あたしは彼女を見る。

「圭介さんの事は……もう良いんだよね?」

「え……」

 指先に付いたポテトの塩を舐め、美波の視線が真っ直ぐに飛ぶ。あたしは両手で缶を包んだままだ。

「旅行、躊躇ってるのって。圭介さんが理由じゃないよね? 今、何となくそう思って」

 あたしは無言で眉を寄せた。

 確かにそうだ。

 仕方なく頷いた。カッコつきの彼氏、圭介の事など、今の今まで忘れていた。
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