ボーダーライン。Neo【上】
 あたしは静寂を保ちながら階下へ降りた。眠らなければいけないと思い、冷蔵庫の中のビールに、つい手がのびる。

 よく冷えた缶を両手で包み込むと、眉を下げて嘆息した。

 ーーあたしって駄目だな。寝酒しないと眠れないなんて、何だか人として終わってる……。

 一度は眠りに就いたはずなのに、急に目が覚めてしまった自分にも嫌気が差す。

 自身を情けないと知りながらも、あたしはガラス戸を開け、ウッドデッキへと続く、桟の上にそっと腰を下ろしていた。

 ビールのプルタブを起こし、リビングの床から少し段差のあるテラスを眼前に、夜空を仰いだ。

 ホップの効いた泡が喉の奥へと流れ、吐息をもらした。

 黒い闇に、点々と星々が浮かんでいる。それを見上げてアルコールを摂るなんて、何だかとても贅沢で、気分が高揚する。

 缶に口を付け、ひと口ふた口飲み込みながら、今日あった事を思い返してみた。

 回った観光スポットは全部で六ヶ所。バッキンガム宮殿にウエストミンスター寺院。国会議事堂、ビッグベン、ロンドン・アイ、ロンドン塔。

 要領良く案内してくれた彼を思い出し、癒しのマスコットキャラ、と呟いてみる。確かに、と思った。

< 111 / 269 >

この作品をシェア

pagetop