ボーダーライン。Neo【上】
 秋月くんの茶色い瞳が一度あたしを見たかと思うと、夜空に向いた。

 彼は右手にペットボトルを握ったまま、僅かに顔をしかめている。

 眉間にしわを寄せた横顔を、どこか寂しい気持ちで見つめていると、ギョッとした瞳と再度目が合う。

「……な、なに?」

「あ、ううん。秋月くん、何か難しい顔してるなぁ、と思って」

「そんな事……、ないよ」

 やはり目を逸らされてしまう。

 あたしは「そっか」と呟いた後、何か会話をしたくて考えた。

「あ。今日は、ありがとう。凄く……楽しかった」

「……いや」

 両手で包む缶に熱を移しながら、頬を緩めた。そのまま宙を見上げる。

 何となく、今日決意した事を宣言してみようと思った。

「あたし。彼と別れようと思うの」

「え?」

 秋月くんがこちらを向き、目を見張った。

「ここ何ヶ月か、ずっと考えてたの。
この歳になって。あの人と別れて……あたしの将来はどうなっちゃうんだろうって」

 そのまま目線は缶へと落ちる。

「一生結婚出来ないんじゃないかって、それが凄く不安で。自分から別れを切り出したら、いつか後悔するんじゃないかって。彼の浮気に目をつぶって。

別れる事が、重大な決断に思えて。ずっと前に進めなかった」
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