ボーダーライン。Neo【上】
 あたしは両手に持った缶を見つめ、でもね、と穏やかに続けた。

「ここに来て、何か視野が広がった気がするの」

「視野が?」

「うん。何て言うのかな」

 言いながら少しはにかんだ。

「日本と違う世界を見て、文化遺産とか歴史とか。世界の大きなものに触れて……。こんな事にずっと囚われてる今の自分がちっぽけだなって、自然と思えたの。
ちゃんと前に進もうって。やっと答えが出たの」

 夜空の星々を見つめていると、少しの間を置いて秋月くんが言った。

「何で、それを俺に?」

 隣りの彼に目を向ける。秋月くんは虚を突かれたように、呆然としていた。

「分かんない。だけど秋月くんなら、頑張れって。言ってくれそうな気がしたから」

 そう言って笑みを向けると、彼も連鎖し、フッと口元を緩めた。

「じゃあ、……ガンバレ。先生の出した決断は、きっと間違いじゃない」

「ん。ありがとう」

 ーー何だろう。この感じ。恥ずかしいけど、もの凄く嬉しい。

 二十代半ばで、恋人に別れを告げて、また新たに婚活しないといけないのに。

 後悔も焦りも、微塵も感じない。

 多分、隣りに居る、癒し系マスコットキャラの効果だ。

 秋月くんがいてくれたから、あたしは前に進める。そんな気がした。

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