ボーダーライン。Neo【上】
 3

 翌日。あたしは秋月くんに連れられ、コヴェント・ガーデン駅で電車を降りた。

 レンガ造りの少しレトロな駅を抜けると、周辺は賑やかな音に包まれ、活気に満ち溢れていた。

 実力派ミュージシャンのライブやストリートパフォーマンスが繰り広げられ、あちらこちらに人だかりが出来ている。

 沢山の人が行き交う中、あたしは彼の隣りを俯きがちに歩いていた。

 はぐれないようにと、先ほど降りたホームで手を繋がれ、自然と右手を意識してしまう。

 何がどうなって、秋月くんと二人きりで観光する事になってしまったのか。

 デートにも似た雰囲気に、あたしは戸惑いを感じていた。

 ほんの十分前の事だ。今日の行き先ついて、秋月くんとカイくんが駅で話し合っていた。

 秋月くんはコヴェント・ガーデンという所からソーホーという所まで歩くつもりだと言ったのだが。そこに美波が割り込み、ブランドショップ巡りを希望した。

 ブランドショップがある通りはまた少し離れた場所にあるらしく、どうしようかと考えた結果、美波が更に別行動を提案した。

 美波はカイくんに連れられ、ブランドショップへ。残されたあたしと秋月くんは、当初の予定通りコヴェント・ガーデンへとやって来た。そういう流れだ。

 別に意図してこうなった訳でもないのに、やはり手を繋がれていると、自然と意識してしまう。

< 115 / 269 >

この作品をシェア

pagetop