ボーダーライン。Neo【上】
 お洒落な建造物をバックに、写真を撮る人がちらほらといた。

「ね、ね? あたしも写真撮りたい! 秋月くん、撮って?」

「ハイハイ」

 彼にデジカメを渡し、少しはにかみながらピースサインを作る。

「次、秋月くんも撮ってあげる」

「俺はいいよ」

 カメラを構えて写真を撮ろうとすると、彼が手を上げて制す。あたしは肩を揺らし、クスクスと笑った。

「あ。どうせなら一緒に撮ろっか?」

「え?」

 予期せぬ提案に、言わずもがな虚を突かれる。

 秋月くんはあたしからカメラをもぎ取り、通行人に声を掛けた。

「Excuse me!」

 流暢に英語を話す彼を、正直、素敵だと思った。それと同時に羨ましくもあった。

 英語教師でありながら、あたしは彼みたいには喋れない。自信も無いから行動力も伴わない。

 あたしは俯き、足元を見つめた。

 彼に声を掛けられた外国人のおばさんは、快くカメラを受け取ってくれた。

 カメラのフレームがこちらを向き、あたしはドキドキしながら秋月くんの隣りに立った。

「It is she who is cute. It matches it!」

「え」

 ハイ、とカメラを返しながらおばさんは笑顔で言った。

 秋月くんは頬を緩め「Thank you」と返し、手を振る。
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