ボーダーライン。Neo【上】
 車を走らせ、着いた先は、各地域に幾つもの店舗を構える家電量販店。従業員専用の一室に、彼女、水城奈々さんはいた。

 店員さんが言うには、水城さんは未払いの商品を外へと持ち出したらしい。いわゆる万引きだ。

 結果として、何も盗られていないからという理由で、警察への連絡は免れた。良心的な店員さんで良かったと思う。

 もう、しないでね、と釘を差されただけで彼女を引き取れたのはラッキーだった。

 ご迷惑をおかけしました、と頭を下げ、あたしは水城さんを送るため、車に乗せた。

 帰りの車内で、水城さんは万引きの理由を話してくれた。

 彼女は人気のあるデジタルカメラをネットで売り、お金に換えたかったらしい。

 確かにバイト禁止の高校だが、犯罪をおかしてまでお金を作ろうとした行為には、正直驚かされた。

 思えば、水城さんは一学期の終わり、不登校になっていたし、家や学校で何かあったのかもしれないな、とあたしは同情の念が湧いた。

 図らずも、彼女はポツポツと自分の気持ちを話してくれた。

「奈々ね。一学期の終わりに、檜に振られたの」

 秋月くんの名前に反応し、思わず彼女の顔を見た。水城さんは前を向いたまま、悲しそうに唇を噛んでいた。

 あたしは何と言っていいか分からず、曖昧な相槌で返した。
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